【法武装】フリーランスエンジニアのための下請法講座
2021年3月17日 掲載
フリーランスは自分の身は自分で守る必要があります。
たとえば、クライアントから報酬を支払ってもらえなくても、自分でなんとかしないといけません。
今回はフリーランスエンジニアを守るためのどのような法律があるか紹介します。
自分の身を守るときに頼りになるのが「下請け法」というものです。
下請け法があることで、フリーランスはクライアントと対等に契約を結ぶことができ、安心して働くことができます。
しかし、フリーランスの中には下請け法についてよく知らない人も多いです。
本記事を通じて下請け法とは何か、どんなときに適用されるのか、詳しく解説していきます。
下請け法について詳しく知りたい方、フリーランスとして自分の身を守りたい方はぜひ本記事をお読みください。
1.下請け法とは
下請け法とは、下請け取引を公正化させるための法律です。
フリーランスや個人事業主、中小企業は、他の企業から仕事を得ることが多くあります。
しかし、彼らは弱い立場であることも多く、他の企業と対等に契約を交わすことができない場合もあります。
彼らの利益を保護するためにできたのが下請け法です。
特に最近ではフリーランスの人工が急増しており、フリーランスが活躍できる土壌も増えてきました。
たとえばクラウドソーシングが注目されたり、フリーランスエージェントが増えたりしています。
その一方で、フリーランスとクライアントの間でトラブルも増えてきました。
たとえば、クライアントが報酬を約束日まで支払ってくれないなど。
こういったトラブルに巻き込まれると、フリーランスが活動できなくなってしまうので、彼らを守る必要があります。
下請け法は時代の変化に対応するため、これまで何回も改正されてきました。
このように、下請け取引を公正させフリーランスなどを守るための法律が下請け法です。
2.下請け法の対象となる取引
下請け法の対象となる取引は次の4つです。
- (1).製造委託
- (2).修理委託
- (3).情報成果物作成委託
- (4).役務提供委託
これらは委託方法などが少しずつ異なります。
自分が関わる事業がこれらのどの取引に該当するか、確認しながらみていきましょう。
(1).<製造委託
製造委託とは、商品の販売事業者がフリーランスに商品の製造を委託することです。
販売事業者は商品のデザインや性能などを考えてフリーランスに共有し、フリーランスはその通りに作っていきます。
たとえば、自動車の電化製品の部品などの製造は、製造委託に該当します。
(2).修理委託
修理委託とは、商品の修理を行う事業者がフリーランスに修理業務を委託することです。
あるいは、自社で使用する商品の修理を委託することです。
商品を使えるように直す作業が該当します。
点検やメンタルヘルスといった確認作業は修理委託には含まれないので注意しましょう。
(3).情報成果物作成委託
情報成果物作成委託とは、ソフトウェアやWebコンテンツといった情報成果物の作成をフリーランスに委託することです。
本記事を読んでいる方はエンジニアの方が多いと思いますが、エンジニアが請け負う仕事はだいたい情報成果物作成委託に該当するでしょう。
システム開発やアプリ作成のほか、Webデザインなども該当します。
(4).役務提供委託
役務提供委託とは、事業者が他の事業者から請け負った仕事を、他の事業者やフリーランスに委託することです。
たとえば、ソフトウェア開発をA社からB社に委託し、B社がまた別のC社に委託する場合に該当します。
3.下請け法の4つの義務
下請け法律には大きく分けてクライアントに「4つの義務」が課せられます。
これらの義務を果たさないと、罰則対象となる場合もあります。
- (1).書面の交付義務
- (2).支払期日を定める義務
- (3).取引記録の書類作成や保存の義務
- (4).遅延利息の支払義務
これらの義務があることによって、フリーランスは安全に契約をすることが可能です。
1つ1つの義務内容についてみていきましょう。
(1).書面の交付義務
クライアントには、発注書の作成が義務付けられています。
発注書には、給付内容や給付を受領する期日などを記載する必要があります。
この発注書は「3条書面」と呼ばれます。
3条書面には以下の12つことを記載する必要があります。
1. 親事業者、下請け事業者の名称
2. 業務委託をした日付
3. 給付内容
4. 給付を受理する期日
5. 給付を受領する場所
6. 給付内容の検査完了日(検査が必要な場合)
7. 下請代金の額
8. 下請代金の支払期日
9. 手形の金額、満期(手形を交付する場合)
10. 金融機関名、支払い可能額、など(括決済方式で支払う場合)
11. 電子記録債権の額、満期日、など(電子記録債権で支払う場合)
12. 品名、数量、対価および決済方法、など(原材料などを有償支給する場合)
(2).支払期日を定める義務
フリーランスにとって、クライアントの支払いが遅れることは大きな問題です。
下請け法では、支払期日を契約前に予め定める義務もあります。
支払い日は、物品の受理日から長くても「60日以内」と決められており、それ以上長いと違法になります。
フリーランスエージェントの支払いサイトも、60日以内となっていますね。
なお、役務提供委託の場合受理日は、フリーランスが物品の提供をした日であり、親会社が受理した日ではないので注意です。
(3).取引記録の書類作成や保存の義務
納品・検収後のトラブルに対応するため、下請け法では取引記録を保存することが義務付けられています。
納品後にフリーランスとトラブルになることを防ぐためです。
取引内容について書かれた書類は、2年間保存することが義務付けられています。
取引内容の書類は「5条書類」と呼ばれています。
3条書面には以下の17つことを記載する必要があります。
1. 親事業者、下請け事業者の名称
2. 業務委託をした日付
3. 給付内容
4. 給付を受理する期日
5. 給付を受領する場所
6. 給付内容の検査完了日(検査が必要な場合)
7. やり直しの内容、および理由(納品物のやり直しを求めた場合)
8. 下請代金の額
9. 下請代金の支払期日
10. 下請代金の変更後の額(代金を変更した場合)
11. 下請代金の支払手段
12. 手形の金額、満期(手形を交付する場合)
13. 金融機関名、支払い可能額、など(括決済方式で支払う場合)
14. 電子記録債権の額、満期日、など(電子記録債権で支払う場合)
15. 品名、数量、対価および決済方法、など(原材料などを有償支給する場合)
16. 下請代金の残額(原材料などの対価を控除した場合)
17. 遅延利息の額、遅延利息の支払日(支払いが遅延した場合)
(4).遅延利息の支払義務
予め決められた期日までに支払いが行われなかった場合、クライアントは「遅延利息」を支払う必要があります。
遅延日数に応じ「未払金額に年率14.6%を乗じた額」を支払う義務があります。
報酬の支払いが遅れている場合、「遅延利息」を支払い義務があることを思い出し、クライアントに請求することを検討しましょう。
4. 下請け法の活用事例・対策
ここまで下請け法の中身についてご紹介してきました。
ここからは具体的な下請け法の活用事例について解説していきます。
- (1).報酬トラブル
- (2).契約内容以上の業務を要求される
- (3).受領拒否
以上の場合において下請け法がどのように適用されていくのかみていきましょう。
(1).報酬トラブル
- 報酬が未払いのままクライアントと音信不通になった。
- 納品物か未完成が見做され、報酬が一部しか支払われなかった。
- 途中で契約内容を変更され、報酬額が減額された。
こういったトラブルは本当によくあることです。
クライアント側はプロジェクトが予定通りにいかないことが多くあり、その場合外注費を減らそうとし、報酬額が途中で減額することがあります。
しかし、こういったことは下請け方にて違法となっています。
そのため「下請けかけこみ寺」に相談したり、弁護士無料相談などを受けたりすることで、最初の契約通りに報酬を支払わせることが可能です。
(2).契約内容以上の業務を要求される
- システムの仕様が変更となったため、業務を無償でやり直すことになった
- 仕事が受理された後、追加で別のシステム開発も無償で依頼された
元々の仕様書や図面通りに開発を行って納品した場合、無償でやり直しの仕事を請けることはできません。
こういった場合、かかった時間分の費用を負担して欲しいことを、クライアントと話し合うことが重要です。
「下請けかけこみ寺」で相談することで、クライアントとの話し合いの仲介役を担ってくれることがあります。
(3).受領拒否
- プロジェクトが中断されたことを理由に、制作物を受け取ってくれない
- 作成途中でクライアントから発注を取り消したいと言われた。
下請け法では、発注の取り消しを行い、報酬を支払わないことが禁止されています。
こういった場合でも「下請けかけこみ寺」に相談し、報酬を支払うようクライアントと交渉しましょう。
また「発注を取り消したい」という場合も、一定の解約金を請求できる場合もあります。
さいごに
本記事では下請け法律について解説しました。
下請け法とはなんなのか、どのような場合に適用となるのかお分かり頂けたかと思います。
繰り返しになりますが、フリーランスは自分の身は自分で守る必要があります。
下請け法についてしっかり理解し、報酬未払いなどのドラブルがあった場合も、冷静に対処できるようになりましょう。
あらかじめ下請け法を知っておくことでトラブルが起きたときに適切な対応が可能なだけでなく、事前にトラブルを回避することも可能です。
ぜひ活用しましょう。